2021/11/05 09:19

かって、お店では「特級酒」「一級酒」「二級酒」が売られていましたが今はありません。

なぜでしょう?

お酒の種類の定義、規定は国税局が行います。規定の種類によって税率が違うからです。

「特級酒」「一級酒」「二級酒」という分類は1940年(昭和15年)から始まりました。
それまでの支那事変や太平洋戦争を迎え米不足もあり、薄めた酒が出回って「金魚酒」と呼ばれた時もあったそうです。
そのため日本酒の品質を維持するために作られたのが級別制度です。
この分類では5級まであり、この級の表示が政府のお墨付きです。
太平洋戦争で配給制になり、1949年(昭和24年)に「特級酒」「一級酒」「二級酒」の3種類に変更になりました。
それぞれの級で当然税率も違います。
各等級に合う原材料の品種や精米歩合、発酵期間、成分値などの違いでランク付けし、「特級酒」「一級酒」は税務署に申告して監査を受けて、監査に出さないものは品質が良くても無鑑査(二級酒扱い)となりました。

税法上、品質や風味の規定はありません。
規定とは、一級は玄米を60%以上精米し、特級は50%以上の精米ですが、精米歩合40%と70%では使うお米の量が倍近く違いますし監査を受けると税率も高くなります。当然売値も違います。
このように品質や味と対応しないため酒蔵からの反発も大きく、美味しい酒を「二級酒」として販売し、その分税率も安くお客様の手に届きやすいということで、特級酒よりもうまい酒が出回ることもありました。

実質的に制度は無効化していたのです。
地方の酒蔵では、宣伝力の強い大手メーカーに対抗して2級酒として販売していたところが多かったようで、この意気地が地酒として個性的で美味しく安いという人気になったのです。
その後メーカーは独自にランク付けを始め「特撰」(特級酒クラス)「上撰」(一級酒クラス)「佳撰」(二級酒クラス)という名称を付けて売り出しました。

このような中で1975年(昭和50年)、日本酒造組合中央会で「清酒の表示に関する基準」を設け、製造方法による表示区分が実施され、現在の特定名称酒に当たる「吟醸酒」等の名称をもって販売されるようになりました。
その後1990年(平成2年)に、国税庁は「特定名称酒」制度を設け、特定名称酒に純米酒として「純米大吟醸酒」「純米吟醸酒」「特別純米酒」「純米酒」、吟醸酒には「大吟醸酒」「吟醸酒」、本醸造酒には「特別本醸造酒」「本醸造酒」の8種類を規定し、名称と原料、精米歩合、香味や色沢を取り入れ、その後級別制度は1992年に廃止されました。

特定名称酒以外は普通酒で、現在市販される日本酒の中で7割以上のお酒は普通酒です。
普通酒は級別制度の二級酒に当たります。しかし品質が劣るというものではない事はご理解いただけると思います。

ちなみに「清酒」と呼ばれるのは日本酒全般を指します。
ウイスキーを好みワインを愛した人が最後に好んだのが日本酒、
それも自分と酒のつまみに合わせた好みのバリエーションは日本酒の魅力なのかもしれません。