2021/08/27 15:23


どぶろくは実は日本酒ではありません。

このように言うと混乱するかもしれませんが、税法上そうなっています。

どぶろくは日本酒と同様、米麹とお米と水を原料として発酵させて造られたお酒です。

日本酒との違いは、お酒の元になる醪(もろみ)を濾す「上槽(じょうそう)」という工程を通過して出来るものが清酒(日本酒)で、醪のままで飲まれるのがどぶろく(もろみ酒)です。

税法上は、醸造酒は「清酒」「果実酒」「その他の醸造酒」に分かれ、日本酒は「清酒」に当たり、どぶろくは「その他の醸造酒」になり、酒税法上は日本酒ではありません。

日本酒は、その品質定義に「原材米に国内産米のみを使い、かつ日本国内で製造された清酒」とされました。

どぶろくは、醸造では同じ工程で「上槽」されていないので、清酒(日本酒)ではありません。

ただ、濁り酒は醪を荒く濾したお酒で「上槽」経ているので「清酒」となっています。

ちなみに甘酒は「酒」とついていますがアルコールを含んでいないので「清涼飲料水」です。


酒税法は1953年に定められました。

酒税の賦課徴収と酒類の製造および販売業免許等が定められています。

酒税法では酒類製造免許がなければアルコール1%以上の製造は禁止されています。

一般家庭では梅酒やリキュール造りを普通に行っていたのですが、原則は禁止だったため法改正で一般家庭での梅酒やリキュール造りが可能になりましたが、アルコール度数を20%以上(20度以下は違法)、自家消費の原則等条件は厳しいものですが、あくまでも既存の小売業者の保護と酒税の安定した賦課徴収を図る事がその前提にあります。

ところで、度数90度以上の工業用アルコールについてはアルコール事業法で取り扱われます。

どぶろくの製造に関しては「どぶろく特区」として指定された地域がありますが、最低製造量が免除されているだけで、ここでも製造免許が必要です。

酒税法に違反すると10年以下の懲役または百万円以下の罰金です。

無免許でお酒を造った事で起こされた「どぶろく裁判」が1986年にありました。

被告は敗訴したのですが、その時の判決は「製造理由の如何を問わず、自家生産の禁止は税収確保の見地より行政の裁量内にある。」というものでした。

どぶろくは古来一般家庭でも作られていましたが、明治になって酒税法が制定され、どぶろくの自家醸造が禁止されました。

日清・日露の戦費・増税に対し醸造業者への増税を許容してもらうための醸造業者保護策でもあったのです。

実際、国の財政には酒税が大きな位置を占めており、これらの戦費への財政負担は酒税が占めていたと言われます。

日露戦争では戦費がかさみ、米英からの借財でしのいだと言われています。その額は当時の日本の国政予算の数年分で、利子を含めて返せたのは1986年だったそうです。

酒税の占める位置は今日でも大きく、

例えば地方が必要とする地方交付税交付金の財源としての内訳は、所得税・法人税の33.1%、消費税の19.5%で、その総額の残りの50%は酒税から出されています。

このように税法上、酒税は大きな位置を占めているのですね。


日本人が各家庭で晩酌をしていた時代も含め、

今日でもお酒・アルコールは欠かせないものですが、国税のお役に立っていることを知るのも溜飲の下がることで…

今夜の一杯を飲みながらアルコールと一緒に国家・天下を考えるのも面白いかもしれませんね。